接骨院、鍼灸院、整体院、カイロプラクティック、リラクゼーションサロンなど、街にはさまざまな施術施設があります。
患者さんからすると、
「何が違うの?」
「整体師も国家資格なの?」
「資格がなくても治療してよいの?」
と疑問に思われることもあるでしょう。
今回は、国家資格の違いと、無資格者による行為についてよく引用される最高裁判決について説明します。
接骨院・鍼灸院には国家資格があります
接骨院で施術を行う柔道整復師、鍼灸院で施術を行うはり師・きゅう師は、法律に基づく国家資格です。
一方、「整体師」「カイロプラクター」という名称は、日本では医療系の国家資格ではありません。
整体院やカイロプラクティック院を開業している方の中には、医療系国家資格を持っている方もいれば、民間資格のみの方もいます。
ここが混乱の元なのです!
私もカイロプラクティック、正軆術、脊椎骨盤矯正を行っていますが国家資格保有者です。
そのため、施設の名称だけでは、施術者がどのような資格を持っているのか判断できないことがあります。
「人体に無害なら無資格でもOK」という最高裁判決?
無資格者による医業類似行為について、しばしば引用されるのが最高裁昭和35年1月27日判決です。
この事件では、医療上の資格を持たない人が「HS式高周波器」という器具を使用し、料金を取って施術を行ったことが問題となりました。
この最高裁判決を根拠として、
「人体に無害な施術なら、無資格者でも行ってよいと最高裁が認めた」
という趣旨の説明を見かけることがあります。
しかし、この説明だけでは判決の経過が十分に伝わりません。
最高裁は「無資格でもOK」と確定させたわけではありません
仙台高裁は、この事件について有罪としていました。
これに対して最高裁は、問題となった施術が人の健康に害を及ぼすおそれがあるかどうかについて十分な証明がなされていないとして、高裁判決を破棄し、仙台高裁に差し戻しました。
つまり、この時点で最高裁が、
「この施術は無害だから、無資格者が行っても合法である」
と最終判断したわけではありません。
「健康に害を及ぼすおそれがあるのか、もう一度きちんと審理してください」という趣旨で差し戻したわけです。
その後、どうなったのでしょうか
ここが非常に重要です。
差戻し後の仙台高裁は昭和38年7月22日、問題となった施術について人体に悪い影響が生じる場合があるとして、再び有罪としました。
被告人は再度最高裁に上告しましたが、最高裁昭和39年5月7日判決で上告は棄却されています。
経過を簡単にすると、
仙台高裁:有罪
↓
最高裁:破棄・差戻し
↓
仙台高裁:改めて有罪
↓
最高裁:上告棄却
となります。
したがって、昭和35年の最高裁判決だけを取り出して、
「最高裁が人体に無害なら無資格で施術してよいと認めた」
と説明するのは、判決全体の経過を正確に伝えているとは言いにくいでしょう。
では、整体やカイロは違法なのでしょうか?
ここも誤解してはいけません。
国家資格を持たずに整体やカイロプラクティックを行っているという理由だけで、すべてが直ちに違法になるわけではありません。
一方で、「整体」という看板を掲げれば、どのような施術でも自由にできるという意味でもありません。
実際に行っている行為の内容や人体への影響、他の法律で資格が必要とされている行為に該当するかなどによって、法的な評価は異なります。
したがって、
「整体だから合法」
「無資格だからすべて違法」
という単純な二択では判断できません。
ここに、日本の施術業界を一般の方にとって非常に分かりにくくしている制度上の問題があります。
国家資格に基づいて業務を行う施術者がいる一方、「整体」「カイロプラクティック」など、国家資格そのものを名称の前提としない施術も存在しています。
そのため、利用者から見ると、
「誰が国家資格者なのか」「どの資格に基づいて何を行っているのか」「どこからが法律上資格を必要とする行為なのか」が非常に分かりにくい状況になっています。
私は、この分かりにくさこそが、日本の施術をめぐる制度が抱える大きな課題の一つだと考えています。
国家資格を確認することも大切です
患者さんにとって大切なのは、「接骨院」「整体院」「カイロプラクティック」といった施設の名称だけで判断しないことだと思います。
どのような資格を持った人が施術を行うのか。
どのような教育を受けているのか。
そして、自分が受けようとしている施術について十分な説明があるのか。
施術を受ける前に確認しておくことをおすすめします。
当院では、柔道整復師・はり師・きゅう師の国家資格を有する施術者が施術を行っています。
国家資格や施術所について疑問がある場合には、管轄の保健所に確認することもできます。
どの施術を選ぶかはご本人の自由ですが、ご自身の身体を守るためにも、施術者がどのような資格や教育を受けているのかを確認した上で選択されることをおすすめします。
私の考え
私が問題にしているのは、施術者個人の技術の優劣ではありません。
身体に施術を行うことについて、資格制度と法的な位置づけが一般の方に非常に分かりにくいことです。
「運転できる」と「公道を運転してよい」は別です
自動車を運転する技術があっても、公道を運転するには運転免許が必要です。
ところが身体に直接触れる施術の世界では、この線引きが分かりにくくなっています。
整体、もみほぐし、カイロプラクティック、○○療法などには、その名称で開業するための国家資格制度が存在しないものがあります。
一方、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう、柔道整復などには法律で定められた国家資格があり、免許が必要な業務を無免許で行えば、処罰の対象となる場合があります。
つまり、
「無資格なら何をしても合法」ではありません。
同時に、
「国家資格ではない民間療法だから、すべて違法」ということでもありません。
法的な評価は名称だけではなく、実際に何を行っているかによって異なります。
私が問題にしたいのは「誰が上か」ではありません
国家資格者だから必ず上手い、民間資格だから必ず下手だ、という話ではありません。
技術の巧拙(こうせつ)と、法律上の資格・業務の位置づけは別問題です。
大切なのは、患者さんが
- どのような資格を持つ人なのか
- 国家資格なのか民間資格なのか
- その施術が法律上どのように位置づけられているのか
を理解したうえで、自分で選択できることだと考えます。
身体と健康に関わるサービスだからこそ、正しい情報が分かりやすく示されることが、健康被害を減らすためにも必要ではないでしょうか。
参考資料
※本記事は、特定の理学療法士、整体院、カイロプラクティック院、その他の施術者について、その施術の適法・違法を個別に判断するものではありません。個々の行為についての法的評価は、実際の施術内容や態様などによって異なります。

