今から約45年程前、兄弟子である京都の雨森治先生と、奈良の藤本蓮風先生の講習会が大阪市森ノ宮で開催されていて、何度も参加させていただきました。実技指導では「筋が良いね」と褒めていただいたことが、今でも懐かしく思い出されます。
雨森先生は天賦の才があり、配穴から刺鍼までセンスが素晴らしくて治療成績も抜群でした。
私のような凡人が「一穴治療」つまり一つのツボだけで病を治すことは、到底実現できていません。今もその技術に憧れを抱き続けています。
藤本先生の著書にある経穴(ツボ)への考え方は、私にとって大きな学びとなりました。
特に「エネルギーの偏在を修正するのが鍼灸の役割であり、それは外から持ってくることはできない。良いエネルギーを悪い部分へ動かすことで、人は治癒に向かう」というお話は、今でも深く心に残っています。
私は四診(望診・聞診・問診・切診)が長年苦手でしたが、60歳を過ぎてようやく舌診や脈診が少しずつ理解できるようになってきました。特に舌診では、舌の状態を見ただけで身体の内側の状況が手に取るように分かるようになり、自分でも驚いています。
漢方・経方医学では、エネルギー(気血津液)の第一の生産工場は胃、第二は腎と考えられています。胃腸をしっかり整えれば、腎の働きも高まり、全身のバランスが取れて病も改善すると言われています。
腎は生まれ持った生命力を司りますが、胃を治療することでその力を引き出すことができる、という考えに気づいてから、私の治療成績もさらに向上しました。
私は補瀉(エネルギーの補いと取り除き)が上手とは言えませんが、IPコード(イオンパンピングコード)なども活用しながら、効果的な治療を心がけています。
※四診:東洋医学における診察法。望診(視覚で診る)、聞診(音・臭いを診る)、問診(症状を聞く)、切診(触れて診る)の四つの基本診断。