今回は、「仰向けで寝ていると両手がしびれてしまう」というお悩みを抱えた60代女性のケースをご紹介します。
この方は介護関係のお仕事をされており、日々身体を使う機会も多く、仕事に支障が出ないようにしたいとのご希望でした。
まず、頸椎(首の骨)の可動性に問題はなく、整形外科的な検査でも大きな異常は見られませんでした。
手のしびれの原因としてよく見られる「手根管症候群」も疑いましたが、ストレステスト(ティネル兆候やファーレンテスト)では症状の再現がありませんでした。
また、肩関節の可動域も正常で、筋力にも特に左右差はありませんでした。
では、なぜ仰向けに寝ると両手がしびれるのでしょうか?
治療
今回注目したのは「肩の腱板」と「前腕の骨間膜(前腕の骨と骨の間の膜状組織)」の状態です。
これらの軟部組織の緊張や癒着が神経の通り道に影響し、特定の姿勢で圧迫や牽引が加わっていた可能性がありました。
実際、これらの部位に対してアプローチしたところ、治療の途中で患者さんが「あっ、しびれない!」と驚いたように言われました。
通常、こうした症状に対しては痛み止めやしびれ止めの処方が一般的です。
しかしこの患者さんは「なるべく薬を飲みたくない」とのお考えがあり、それに応えるかたちで徒手的な治療を選択しました。
現在はしびれも落ち着き、仰向けでの睡眠も問題なく取れるようになりました。
私たち治療者にとって、患者さんが笑顔で「楽になった」と言ってくださる瞬間ほど嬉しいものはありません。
薬に頼らず、原因にアプローチすることの大切さをあらためて感じた症例でした。