「こんなこともあるのか」と、自分でも驚いています。
私はこれまで声がれに対して、症状に応じて滋陰降火湯(じいんこうかとう)や麦門冬湯(ばくもんどうとう)を使い分けてきました。
鼻うがいも10年近く実施しています。鼻うがいのプロです(笑)
日々の治療では患者さんへの説明も多く、午前・午後と話し続け、夜の診療時間になる頃には声がかすれてしまうことが常態化していました。
冬場は加湿器を2台置き、湿度管理にも気を配っていましたが、それでも改善は限定的。「体質だから仕方がない」と、半ばあきらめていたのです。
きっかけは風邪と後鼻漏
年始にひどい風邪をひき、1月前半は体調不良が続きました。後半になってから、10年前に経験した後鼻漏(こうびろう)の症状が出てきました。
後鼻漏とは、鼻水が喉の奥へ流れ落ちる状態を指します。鼻水が目立って出るわけではないのに、喉に違和感が残るあの不快感です。
診察時に医師へ相談すると、
- 鼻水は前に出るか
- 押して痛む場所はあるか
- いつ症状が強くなるか
などを丁寧に確認され、副鼻腔のレントゲン撮影を行うことになりました。
結果は予想どおり、右の上顎洞は真っ白、左も半分白くなっていました。
「急性の副鼻腔炎ですね」との診断です。蓄膿症です。

上顎洞(じょうがくどう)は、目と口の間、頬の奥の骨の中にある空洞です。
ここに炎症が起きると、副鼻腔炎となります。レントゲンで白く写るのは、炎症による粘膜の腫れや貯留物があるためです。
抗菌薬ではなく、漢方薬を選択
担当医は抗菌薬を多用しない方針で、別の方法を選択されました。
処方されたのが、カルボシステイン、ベポタスチンベシル酸塩、漢方薬です。漢方薬が荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)でした。
服用を開始して、わずか1週間。
驚いたことに、長年悩まされていた声がれが、ほぼ消失したのです。
副鼻腔炎の改善だけでなく、慢性的だった嗄声まで軽減するとは思っていませんでした。
再診時にそのことを伝えると、医師も「効くとしたら漢方薬かもしれませんね」と驚かれていました。
声がれの本当の原因は?
これまで私は、体質や乾燥、酷使が原因だと考えていました。しかし実際には、慢性的な副鼻腔炎や後鼻漏による咽頭への刺激が、長年の声がれの背景にあった可能性があります。
コロナ禍以前から鼻うがいを習慣にしていたことも、回復を早めた一因かもしれません。
体はつながっている
長年の不調が思いがけない形で改善すると、本当に嬉しいものです。
症状のある部位だけでなく、その背景にある慢性的な炎症や体内バランスを整えることの大切さを、改めて実感しました。
「持病だから仕方ない」と思っている症状の中にも、実は改善の余地があるのかもしれません。
同じように声がれで悩んでいる方の参考になれば幸いです。
後鼻漏も収まっている日もあり、出でも5分の1くらいに落ち着き安心しています。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は、比較的体力があり、皮膚がやや浅黒く、炎症を繰り返しやすい体質の方に用いられる漢方薬です。
主に、ニキビ・慢性鼻炎・副鼻腔炎(蓄膿症)・慢性扁桃炎など、化膿や腫れを伴う慢性的な炎症に適しています。体内にこもった「熱」や「毒」を鎮め、炎症や化膿を抑え、アレルギー傾向の改善を目的とします。
また、慢性的な扁桃炎や副鼻腔炎による喉の腫れ・痛み・炎症を和らげ、炎症が長引くことで起こる声がれにも効果が期待されます。特に、いわゆる「解毒証」とされる炎症体質の方に適しています。
一方で、喉の乾燥や声の使い過ぎによる声がれには、通常は麦門冬湯(ばくもんどうとう)が用いられます。
つまり、荊芥連翹湯は「慢性炎症型・熱がこもる体質」に、麦門冬湯は「乾燥型・消耗型」の声がれに使い分けるのが基本となります。

