吸角療法は、エジプト時代から存在する治療法です。
吸角(きゅうかく)、吸い玉、火缶・火罐(かかん)など言い方は色々あります。
竹、ガラス、プラスチックなどの、球状や缶状のものを、火や真空ポンプで陰圧して皮膚を吸引します。
火炎陰圧や真空ポンプを使用しない製品を、吸角(カッピング)と称する施設があります。反応内出血は起こしますが効果は殆どありません。
飛騨地方の歴史
地元の高齢患者さんに、色々伝承されていることを聞きました。
昔は内肩(膏肓こうこう)を切って吸い玉で血を吸い出していました。
私の母親も若い頃、吸い玉をやってもらっていました。
カミソリなどで皮膚を細かく傷を付け吸い玉を当てました。そうすると悪い人は、ゼリー状の血液が溜まります。
ノボセ、肩こり、高血圧、血の道症(更年期障害)の治療として行われていたようです。
飛騨地方でもっと田舎の方の人は、旅(出稼ぎなど)に出て中風や卒中などで倒れないために、16~18歳になると、肩甲骨の間のツボである膏肓(こうこう)へ同じように行っていたそうです。
残念なのは、モグリ(無資格者)の人が多数行っていた実情があります。
そのような民間療法があったのです。
昭和51.52年くらいに、降圧剤のアダラートが発売されてからは、順次、衰退していきました。
肝炎などの血液を介して感染する病気の存在が分かってきたのも、衰退していった理由だと思います。
当院の歴史
昭和の開業当初より、刺絡を行わない吸角療法は取り入れていました。
当時も、無資格者の人が皮膚に傷を付けての吸い玉を行われていたので、それを行っていると混同される患者さんが多く、結局中止するに至りました。
新しい吸角療法
治療を研究し数十年。
やはり、血液の滞りや偏りが体の変調を来すことは明白です。
加圧リハビリ、加圧トレーニングで血液を四肢にプーリングさせることにより、筋肥大や筋反射スピードの向上がみられるのは周知の事実です。
血液は大切です。
老化の本質は血液量の減少です。
老化と共に手足への血流より内臓への血流を優先するために、手足の色々な関節が痛くなります。
本当は血液が増えると良いのですが、それは不可能です。
血液量は増やせませんが、偏在しいる血液を操作するとこは可能です。
そのような考えに至り、再び吸角療法を行うことにしました。
使用した感想
マッサージとは比較にならない程、深部筋肉への効果が得られます。
ファシア(筋膜)の問題も一気に解決します。目からウロコです。
真空ポンプで行うので、吸引圧のコントロールを正確に行えます。皮膚を陰圧で吸引マッサージする器械もありますが、吸角の方が数段優れているのを若い先生方は知らないのです。
欠点は、軽く内出血の痕が付き、痕が消えるのに約1週間から10日程かかります。
この時の、内出血の傾向で健康状態や患部の状態を把握できます。
効果(抜粋)
検査しても異常が出ない患者さんなどの、つかみどころのない漫然とした違和感や痛みに効果があります。
肩こりには抜群の効果を発揮します。骨粗しょう症がある患者さんでも圧を加えませんから問題無く治療が可能です。
腰椎椎間板ヘルニア由来の有無にかかわらず、坐骨神経痛には抜群の効果を発揮します。
吸角は鍼治療以上に効果が出ます。足を引きずる状態でもこれを行うと通常通り歩けるようになります。
肩関節炎、五十肩、変形性膝関節症、股関節症に抜群の効果を発揮します。関節炎には血液を患部へ集めることにより治療効果が出ると考えています。
脊柱管狭窄症の痛みやシビレに効果を発揮します。軽快にはなりますが、根本的な解決は狭窄の除圧手術になります。
どこに瘀血があるかを判定することが治療効果を出すポイントになります。
密になっている所から疎へ移動させます。
なぜ当院の治療は日進月歩するのか
医療に携われば、全能の神になったように色々な症例を治せることもあります。
しかし、全く太刀打ちできず改善しなかった症例も山ほどあります。
改善しなかったり治らなかった症例の記憶はずっとあり、いつかは治せるようにと研究をしています。
その結果、数年前来院された患者さんの同じ症例を治すようになったりしています。
そのあきらめない努力が、より良い治療法を作り出しています。