45年の臨床経験|観察から原因を見極め結果に導く

運動後の疲労にマッサージは必要でしょうか?

最近、スポーツをしている学生さんから、

「運動後の疲労を取るためにマッサージをしてほしい」

と言われることがあります。

スポーツ後のマッサージやさまざまなリカバリー法が広く行われるようになりましたが、私は、通常の運動後の疲労であれば、マッサージを受ける必要はないと考えています。

まずは自分で回復できる身体を大切に

私自身、若い頃に運動をしていたときは、多少の筋肉疲労があっても、一晩しっかり眠ると翌日にはかなり回復していました。

もちろん、練習量、競技レベル、年齢、その日の体調などによって疲労の程度は違います。

それでも通常の運動による疲労であれば、まず大切なのは、

  • 十分な睡眠
  • 適切な休養
  • 栄養
  • 水分補給

といった基本的な回復条件です。

疲労がなかなか抜けない場合には、「マッサージを受けていないから」と考える前に、睡眠不足、練習量、栄養状態などに問題がないかを一度見直した方がよいと思います。

マッサージで「楽になる」ことと「運動能力が回復する」ことは別です

マッサージそのものを否定しているわけではありません。

研究でも、マッサージによって筋肉痛が軽くなったり、柔軟性が一時的に改善したり、リラックスしたり、「身体が回復した」と感じたりする可能性が報告されています。

一方で、「マッサージをすれば筋力や持久力が回復する」「運動能力が高くなる」というところまで、現在の研究で明確に確認されているわけではありません。

私はここを分けて考えることが大切だと思っています。

「気持ちがいい、身体が楽になった」ということと、「身体の機能や運動能力そのものが改善した」ということは同じではありません。

強い刺激ならよい、というものでもありません

もう一つ、スポーツをしている人に覚えておいてほしいことがあります。

筋肉や筋膜に対して、強い力を加えれば加えるほど回復するわけではありません。

強すぎるマッサージや筋膜への刺激によって、痛みや皮下出血などが起こることもあります。

私自身は臨床上、必要以上に強い刺激を繰り返すことには慎重です。

特にスポーツ選手の場合は、「強く揉んでもらったから効いた」と考えるのではなく、競技に必要な筋力や動きを損なわないことも大切だと考えています。

当院ではマッサージを行っていません

当院では、疲労回復を目的としたマッサージや、もみほぐしは行っていません。

私が臨床で重視しているのは、「気持ちよく揉むこと」ではなく、症状がある場合に、なぜその症状が出ているのかを確認することだからです。

例えば、

  • 一晩休んでも痛みが残る
  • 同じ場所を繰り返し痛める
  • 関節が動かしにくい
  • 身体の動きに左右差がある
  • 特定の競技動作で痛みが出る

といった場合には、単なる運動後の疲労ではない可能性があります。

このようなときは「疲れているから揉む」のではなく、どこに問題があるのかを確認したうえで、必要な対応を考えます。

スポーツ障害や外傷が疑われる場合には、整形外科などでの診断や検査が必要になることもあります。

「休めば回復する疲労」と「治療が必要な痛み」を区別する

これは特に若いスポーツ選手に覚えておいてほしいことです。

「休めば自然に回復する疲労」と「身体に問題が起きていて治療が必要な痛み」は区別して考える必要があります。

何でも治療すればよいわけではありません。

逆に、治療が必要な状態を「ただの疲れ」と考えて、マッサージを繰り返すことにも注意が必要です。

長年スポーツをしている学生さんを診ていると、私はまず「これは本当に疲労なのか、それとも身体のどこかに問題があるのか」を確認するようにしています。

当院で行っているコンディショニング

年齢を問わず、疲労回復や身体のコンディショニングを希望される方には、当院ではマッサージとは異なる方法を自費施術として行っています。

その一つが、ミトコンドリアの働きや運動による代謝反応に着目したコンディショニングです。

また、競技をしている方には、状態に応じて筋出力や身体機能を考慮した鍼施術を行うこともあります。

私の臨床経験では、施術後に身体機能の変化がみられることがあります。

ただ面白いのは、本人には「何かされた」という強い感覚がほとんどないことです。

強い刺激を受けて「効いた感じ」がすることと、身体機能に変化が起こることは、必ずしも同じではない。これは長年施術をしていて感じるところです。

研究ではスポーツマッサージはどう評価されているのでしょうか

2020年に発表されたスポーツマッサージについての系統的レビュー・メタ解析では、29研究、合計1,012人について検討されています。

その結果、マッサージによって、

  • 筋力
  • ジャンプ能力
  • スプリント能力
  • 持久力
  • 疲労

が明確に改善するという結果は得られませんでした。

一方、柔軟性と遅発性筋肉痛(DOMS)については、小さいながら改善が認められました。

ただし、研究方法やマッサージの方法には違いがあり、特に一部の解析では研究間のばらつきも大きいため、結果の解釈には注意が必要です。

さらに2023年に発表された114研究を対象とした系統的レビューでも、マッサージが運動能力そのものを直接高める効果は、柔軟性を除いて限定的とされています。

一方で、痛みや遅発性筋肉痛、疲労感、ストレスなどを軽減し、リラックス感や「回復した」という感覚を高める可能性が報告されています。

つまり、

「マッサージを受けると楽になる」ことと、「身体の回復や運動能力そのものが向上する」ことは、分けて考える必要があります。

これは研究結果を見ても、私が日々の臨床で感じていることと重なる部分があります。

スポーツをして疲れたから、毎回何かをしてもらわなければいけない。

私は、若い選手にはそのように考えてほしくありません。

まずはよく食べ、しっかり眠り、適切に休む。そして自分自身の回復力を大切にする。

それでも痛みが残る、同じところを繰り返し痛める、動きがおかしい。

そのときに初めて、「単なる疲労ではないかもしれない」と考えて身体を詳しく調べる。

私は、この順番が大切だと考えています。

参考文献

スポーツマッサージがパフォーマンスと回復に及ぼす影響:系統的レビューとメタ分析 – PMC https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7228568/?utm_source=chatgpt.com

マッサージ療法がスポーツおよび運動能力に及ぼす影響:系統的レビュー – PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37368560/

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村坂 克之

小又接骨院・鍼灸院の院長です。鍼師、灸師、柔道整復師の国家資格にて治療を行っています。屋号の小又(こまた)は、先祖の小谷屋亦治郎(亦=又)に由来します。PC文字入力は親指シフト(orz配列)ユーザー。
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