臨床を続けて45年になります。
その中で、繰り返し目にしてきた光景があります。
「揉んでもらっても、その日だけしか楽にならない」「だんだん強く押してもらわないと、気持ちよくない」「昔より強い刺激でないと、もの足りなくなった」
こうおっしゃる患者さんが、後を絶ちません。
「こっているから強く押す」の落とし穴
肩こりがあると、多くの方が「こっているから、しっかりほぐさなければ」と考えます。
その気持ちは、よく分かります。
しかし、強い刺激を繰り返し受け続けると、身体はその刺激に慣れていきます。これは身体の防御反応です。
最初は少しの刺激で「気持ちいい」と感じていたのに、次第に同じ刺激では物足りなくなる。そこでさらに強い刺激を求めるようになる。
これはちょうど、同じ量の薬を飲み続けると効き目が薄れてくるのに似ています。
刺激への慣れが「改善しない身体」をつくる
強い刺激を求め続けた結果、どうなるか。
筋肉や神経は、強い圧力に対して「防御」のためにさらに緊張しやすくなります。強く押すことで一時的に血流が増えて楽になる感覚はあっても、根本的な筋肉の緊張は解けていないのです。
むしろ、慢性的な強刺激は組織にダメージを与え、炎症を繰り返すことにもなりかねません。
「治療をやめると、すぐ戻る」という方の多くは、この悪循環に入っています。
肩こりの陰に「脊椎の歪み」がある
見落とされがちなのが、頸椎・胸椎の歪みや関節の動きの制限です。
肩まわりの筋肉がいくら緊張していても、その背後に脊椎の関節に問題があれば、筋肉だけをほぐしても根本的な改善にはなりません。
頸椎や上部胸椎の動きが悪くなると、そこに分布する神経や血流が影響を受け、肩まわりの筋肉が慢性的に緊張し続けます。強くもんで一時的に楽になっても、すぐ元に戻るのはこのためです。
当院では、脊椎関節の動きを丁寧に評価し、必要に応じてマニピュレーション(脊椎矯正)を行います。関節の動きを取り戻すことで、筋肉の緊張が自然に緩んでくることが多くあります。
本当の改善には「適切な刺激量」と「根本へのアプローチ」が必要
当院では、刺激の強さよりも「刺激の質と量のコントロール」を重視しています。
鍼治療・手技・脊椎矯正、いずれもその方の状態に応じた適切な刺激量があります。
刺激が強ければ良いわけではありません。適切な刺激が身体の自然な回復力を引き出し、筋肉と関節を本来の状態へと導きます。
当院では刺さない「てい鍼」も積極的に使います。ほとんど刺激がないように感じられるこの治療が、過緊張の身体には有効に働くことが多くあります。
強い刺激でないと満足できない方へ
「もみ返しが気持ちいい」「痛いくらいがちょうどいい」という感覚が当たり前になっていたら、それは身体からのサインかもしれません。
そのサインは「もっと強くして」ではなく、「アプローチを変えてほしい」という意味です。
長年の肩こりが改善しない方、どこへ行っても変わらない方は、ぜひ一度ご相談ください。
刺激量を見直し、脊椎の動きを整えることが、本当の改善への第一歩になります。

