臨床45年で、膝の痛みを訴えて来院される患者さんは実に多いです。
「膝が痛い」とひと言で言っても、その原因はさまざまです。整形外科でレントゲンを撮って「異常なし」と言われても痛みが続いたり、逆に「軟骨がすり減っている」と言われて手術を勧められて不安になったりと、患者さんは混乱されることが多いです。
今回は、よく見られる3つの状態について整理します。
膝関節炎(変形性膝関節症)
加齢とともに膝の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きる状態です。中高年の女性に特に多く、O脚の方は進行しやすい傾向があります。
整形外科では消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注射が標準治療です。
しかし注意が必要なのは、消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)は痛みを感じにくくするだけでなく、疲れも感じにくくしてしまう点です。「薬を飲んで楽になったから」と無理に動いてしまうと、かえって関節を痛めてしまいます。
ヒアルロン酸注射も、最初の数回は驚くほど効果があります。
しかし軟骨を再生する力はありません。効果が弱まれば注射の頻度が増えるだけで、根本的な改善にはなりにくいのが現実です。実際、米国整形外科学会(AAOS)のガイドラインでは、膝関節症へのヒアルロン酸注射は「日常的には推奨しない」という立場です。
当院では、鍼治療と高周波温熱療法(ラジオ波)を組み合わせています。関節の深部まで熱を入れることができるのは、お灸と高周波だけです。また、自宅でのお灸を指導することも多く、「ヒアルロン酸より効いた」とおっしゃる患者さんも少なくありません。
膝に水が溜まる(関節水腫)
「膝に水が溜まった」と言って来院される方も多いです。
膝の関節内は本来、少量の滑液(かつえき)で満たされています。炎症が起きるとこの液体が過剰に産生され、関節が腫れてパンパンになります。これが関節水腫です。
整形外科では注射で水を抜くことが行われます。「水を抜くと癖になる」とよく言われますが、これは半分正解で半分誤りです。抜いた直後は楽になりますが、炎症の原因が取り除かれていなければ、また水は溜まります。
当院で効果的なのは加圧リハビリ®です。筋反射力が向上すると膝の水が自然と引いていくことを、臨床の現場で何度も確認しています。ただし、調子が良くなったからといって急に運動を増やすと水が戻ることもあるので、段階的に動いていただくことが重要です。
また、膝の後ろ側に水の袋ができる「ベーカー嚢胞」は、この関節水腫が慢性化したものです。前後に滑液の流れがあるかどうかを確認しながら、経過を見ていきます。
半月板損傷・変性
半月板は大腿骨と脛骨の間でクッションの役割を果たす軟骨の板です。スポーツや転倒によって損傷することもありますが、加齢による「変性」も非常に多いです。
MRIで「半月板損傷」と診断されることがありますが、実は痛みのない中高年でもMRIを撮れば半月板に変性が見つかることは珍しくありません。「MRI所見=痛みの原因」とは限らない点は、患者さんに知っておいていただきたいことです。
治療としては、高周波温熱療法が有効です。半月板は血流が乏しく自然治癒しにくい組織ですが、熱を入れることで周囲の血流を改善し、回復を促すことができます。鍼と組み合わせることで、より効果が出ます。
共通して大切なこと
膝の痛みに共通して言えることがあります。
「完全にゼロにしたい」という気持ちは分かりますが、加齢による変化がある以上、現実的には”痛みと折り合いをつけながら生活の質を保つ”ことが目標になる場合も多いです。
その見極めをしながら、患者さんひとりひとりに合った治療を提案しています。
膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

