村坂 克之 
日本人は、2人に1人癌に罹り、3人に1人は癌で亡くなられます。日本では癌死が1位、米国では心臓血管死が1位です。
癌になっても生き残るには体重、すなわち脂肪が必要と灰本先生は言われています。
単行本
50歳を過ぎたらダイエットしてはいけない メタボの嘘と肥満パラドックスの真実 単行本 –
Kindle本
50歳を過ぎたらダイエットしてはいけない メタボの嘘と肥満パラドックスの真実 (文春e-book) Kindle版
目次
- はじめに
- 第1章 小太りが長生きするとはどういうことか
- 第2章 メタボリックシンドロームの嘘
- 第3章 肥満パラドックスの正体
- 第4章 小太りはあらゆる病気に強いのか？
- 第5章 健康で痩せた人をどう考えるか
- 第6章 若いときも小太りで大丈夫
- 第7章 本邦初公開 太る食事術
- 第8章 肥満パラドックスが常識になる日
多忙な開業医の先生が執筆したとは思えない内容で、データが多く研究者が執筆した専門書のようです。
肥満パラドックスとは
小太りはたとえ病気を発症しても生き延びるが、瘦せはいったん発症すると生き残れないことです。
一番死亡リスクが高いのは痩せた人、それも痩せれば痩せるほど死亡リスクはどんどん上がっていくということになります。｜本文より引用
日本人で統計学的に死亡リスクが低いのは男性でBMI23.0~29.9、女性で21.0~26.9、これはこの本で一番重要な数字ですのでぜひ覚えておいてください。｜本文より引用
癌の現実
日本人の2人に1人が癌にかかります。そして、早期癌で見つかるか、進行癌で見つかるかを最も左右するのは、残酷ですが「運」なのです。
人間ドックや健診を毎年受けていても早期癌で見つからず、進行してから見つかることもしばしばありますし、勧められていやいや受けた初めての健診で早期癌が発見されることもよくあります。
努力や人知を超えているのが癌という病気です。
｜本文より引用
私も牛に引かれて善光寺参りではありませんが、家内の検診のついでに受診し早期癌を2回も見つけて頂いたので「運次第」は実感しています。
小太り肥満と痩せの人生の症例
義母も小太りですが、4．5年前に悪性リンパ腫になり、入院治療で良好になり4人部屋になりましたが、同室の痩せてた2人は亡くなられました。
亡くなられた1人は、痩せて規定体重にならないので抗がん剤ができないと言われました。痩せていては癌には立ち向かえないのです。
それを耳にした義母は、吐き気がしても必死に食べていました。
先生の言われた事は本当だと実感しています。
著者／灰本元先生
先生は、愛知県春日井市の灰本クリニックの理事長です。
医療法人芍薬会 灰本クリニック（内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、呼吸器内科）
現在、糖質制限食と経方医学の普及に尽力され、日本ローカーボ食研究会代表幹事、名古屋百合会を主催されています。
経方医学とは、漢方医の江部洋一郎先生（高雄病院名誉院長、京都市）が提唱している理論体系です。漢方の古典といわれる『傷寒論』『金匱要略』の解釈を再構築されました。
継承されている灰本元先生は、五苓散（ごれいさん）の頭痛への効果や、黄耆（おうぎ）の腎不全への効果を発見された先生です。
- 灰本 元. : 慢性頭痛の臨床疫学研究と移動性低気圧に関する考察-五苓散有効例と無効例の症例対照研究. フィト, 1 : 8-15, 1999.
- 灰本 元．：慢性腎不全における黄耆の血清クレアチニン低下作用．漢方の臨床 2005；52：1005‐1014．
私も灰本元先生にご教授頂き、立位の解剖学を勉強して、鍼灸と漢方の関連を探り、胸・膈・心下と症状の関連が分かり始め、治療成績が飛躍的に向上しています。
著者既刊
感想
まず、引用論文が108編もあります。分かりやすく書かれていますが専門書に近いです。
よくある健康本の、医師が診療の印象から導く書籍が多い中、データに基づいた衝撃的な内容でびっくり仰天です。
メタボは無意味
厚労省が推進しましたが、3000万人規模の研究からでもおかしいと、腹囲の検査はナンセンスと指摘されています。
健康と言われるBMI22では痩せ
海外ではBMI30以上が肥満だそうです。中高年でBMI22を目指すのは無理筋、意味が無いと言われています。
小太り肥満は医療費がかかるのでは？
私も常々疑問に思っていましたが、肥満による高血圧は安価な薬（1日0.5－10円）でコントロールでき、糖尿病もゆるやかな糖質制限でコントロールできるから、総医療費の軽減につながると言われています。
灰本クリニックの臨床研究を2021年、海外専門誌に発表されていますが、内容は、初診時の平均HbA1cが8.1％だった糖尿病患者245人に糖尿病薬を一切使わず、ゆるやかな糖質制限食だけで6力月治療した結果、HbA1cを平均1.2％下げることができたとの事です。
糖質（炭水化物＝ごはんなど）の感受性も人それぞれなので、糖質制限を始める場合は専門医の指導を受けて下さい。
健康な痩せはどうなの？
調査期間が5－10年だと、肥満（BMI24-25）と痩せ（BM20以下）では痩せが2倍亡くなります。長期間になるとＪカーブが左へ寄り肥満と痩せの差が減りますが、それでも痩せが20－30％多く亡くなるそうです。
手術には脂肪が邪魔
手術には脂肪が邪魔になるそうですが、手術自体は執刀医の腕でなんとかなるそうです。それより術後の体力回復がもっと重要で、脂肪が必要なのが現場の医師は既に知っているそうです。
痩せた人は太れるの？
痩せるなと言う医者は希にいますが、そうしたら太るにはどうするの？の答えを提示されたのは灰本先生が本邦初だと思います。
家内の友人も痩せ体形で、医者に痩せるなと言われているんですよーと言いますが、お菓子を食べてもコレステロールが上がるだけで太らないと嘆いてます。
油で太る
実際、痩せ人は太りたいと節に願っていますが、食べ物の量を増やすと胃がもたれて続きません。
結局、痩せたままです。それでは残念ながら癌には勝てません。
答えは油です。
今までより、1日大さじ1.5～2杯の油を取れば体重を増やせます。
油の種類、実は大豆油で十分と言うのは衝撃です。EPA.DHA など健康に良いと言われる油を販売している業者から苦情が来そうです。
私の友人にも今週その話をしたら、オリーブ油など油に気を使っていていましたが、この事実を知ってびっくりし、早速本を買うそうです。
痩せろの大号令も終わる
これだけのデータを提示されて、小太り肥満が長生きすると言われても、ダイエット産業はいつの時代でも花盛りです。
ダイエット産業が衰退しないのは、ダイエットが成功しないからです。
太っていた人が痩せると若く見える場合が多いですが、それよりも早死にしては元も子も無いのです。
この本で、肥満も癌に立ち向かい長生をする唯一の方法と学びましたが、BMI 32.0（大太り）の私はもう少しだけ痩せたいです。