CNN Health に衝撃的に記事が掲載されました。
Omega-3 supplements may not improve brain function | CNN
魚油(フィッシュオイル)のサプリメントを飲んでいる方は多いと思います。「認知症予防に効く」という情報が広まっているからです。
ところが2026年6月、医学誌『eBioMedicine』(The Lancet傘下)に発表された臨床試験が、その常識に疑問を投げかけました。
オメガ3とは何か
オメガ3は、体内で作ることのできない必須脂肪酸です。
人間の脳の約60%は脂質でできています。そのうち約35%がオメガ3です。それほど重要な栄養素ですが、自分では合成できません。食事から摂るしかないのです。
主な種類は3つあります。
- EPA(エイコサペンタエン酸):炎症を抑え、心臓の健康を支える
- DHA(ドコサヘキサエン酸):脳・目・神経系の構造材料
- ALA(αリノレン酸):エネルギー代謝に関わる抗酸化物質
EPAとDHAはサーモン・サバ・イワシなどの脂の乗った魚に多く含まれます。ALAはクルミ・チアシード・亜麻仁に豊富です。
魚をあまり食べない現代人には不足しがちな栄養素です。それがサプリメントが普及した背景にあります。
最新の臨床試験が示したこと
今回の試験は、科学的に最も信頼性の高い「無作為化二重盲検プラセボ対照試験」です。
対象は55〜80歳の365名。認知症はないが、肥満・運動不足・高血圧・高コレステロールなど認知症リスクを持つ人たちです。全員、血中オメガ3濃度が極めて低い状態でした。
治療群には毎日2,000mgのDHAサプリメントを24ヶ月間投与しました。
結果、赤血球中のオメガ3濃度は4.9%から11%に上昇しました。脳脊髄液中のDHAも6ヶ月で17%増加し、サプリが脳に届いていることは確認されました。
しかし、認知機能の改善はありませんでした。記憶の中枢である海馬のサイズにも変化はありませんでした。プラセボ群と実質的に差がなかったのです。
なぜ効かないのか
主任研究者のヤシン博士(南カリフォルニア大学)はこう述べています。
「地中海地域では、オメガ3の血中濃度が高い人ほど認知機能が良い。しかし彼らはサプリを飲んでいない。脂の乗った魚を食べ、運動し、友人と交流し、ゆっくり生活している」
運動せず、加工食品を食べ、慢性的にストレスを抱えている状態では、いくらオメガ3が脳に届いても「焼け石に水」だということです。
サプリは生活習慣の代わりにはなりません。
では、何が効くのか
研究者たちが推奨するのは次のことです。
- 脂の乗った魚を週2回食べる(サーモン・サバ・イワシなど)
- 運動する
- 質の良い睡眠をとる
- ストレスを減らす
- 植物性の食事を基本にする
その上で、食事だけでは不足する場合の補完として、サプリを使う。この順番が大切です。
院長のひとこと
東洋医学には「養生(ようじょう)」という考え方があります。病気を治すより、病気にならない生活を整えることを優先する。現代の言葉で言えば、生活習慣の最適化です。
今回の研究が示したことは、まさにそれです。
飛騨の食卓には昔から川魚があります。しかし岩魚(イワナ)や鮎は季節のものです。年中食べられるわけではありません。
ただ、今は選択肢があります。富山は近い。新鮮な海の魚が手に入ります。冷凍技術も発達しました。品質の良い冷凍サーモンやサバは、スーパーで普通に買えます。
地元の旬の川魚を大切にしながら、海の魚も上手に取り入れる。それが飛騨に住む私たちにできる、現実的な食べ方だと思います。
「何を飲めば治るか」より「どう生きるか」。その問いのほうが、ずっと本質に近いと思います。
出典論文
- タイトル: CNS target engagement of high-dose DHA supplementation in older adults at risk for dementia: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
- 掲載誌: eBioMedicine(The Lancet傘下、オープンアクセス)
- PMID: PMID: 42315445 DOI: 10.1016/j.ebiom.2026.106316
- DOI: 10.1016/j.ebiom.2026.106316
- 公開: 2026年6月

