先日、奥さまが当院に通われていて、ご主人を連れて一緒に来てくださいました。
ご主人の主な症状は、10年くらい前からの「左の背中の痛み」と「強いコリ感」。年齢は40代です。
つらくなるたびに、奥さまがマッサージや指圧をしてあげていたそうです。とても仲の良いご夫婦です。
心臓の影響(心臓神経症など)も疑いましたが、東洋医学的には問題なし。まずは安心です。
【1回目】 背骨のゆがみ(可動域)を調整
初回の治療では、首から背中にかけての背骨(頸椎〜胸椎)を整えました。椎間関節の動きを矯正します。
すると、その場で痛みがスッと引いたのですが……
数日後、「また元に戻った感じです」とのこと。(2回目の治療時に)
そんなとき、奥さまが一言 「この人、昔から肩が上まで上がらないんです」
…これは、まさに“ゴールへのヒント”でした。
【2回目】 肩が上がらないのが原因かも?
奥さまのヒントをもとに、肩の動きを検査しました。
すると、やっぱり! 腕を上げても耳まで届きません。しかも、ご本人いわく「昔からそうなんです」とのこと。
肩を動かすと、肩甲骨が“ゴリゴリ”と音を立てるのも気になると言われます。これは、肩まわりの関節や筋肉がうまく連動していないサインです。
そこで、鍼灸の考えを応用して、指先に刺激を加える施術を行いました。多少は改善しましたが、まだスッキリとはいきません。
【3回目】 本当の原因は「肩甲骨の動き」だった!
ここで重要なポイントを整理します。
腕をまっすぐ上に上げる(180度挙上)ためには、 肩の関節だけでなく、 肩甲骨の動き(回旋)が欠かせません。
この動きのバランスは「肩甲上腕リズム」と呼ばれます。
簡単に言えば、肩の関節と肩甲骨が2:1の割合で協力し合って動くというルールです。
さらに、「肩を動かし始めるときに働く棘上筋」という筋肉の役割も大切です。
この仕組みに沿って、肩甲骨を正しく動かすように治療したところ…
「うわっ、手が上がった!」と感動の瞬間
その場でスッと腕が耳まで上がるようになり、背中の痛みやコリ感もウソのように消えました。
患者さんは目を丸くして、 「今までいろんな所に通ったけど、痛いところを押したりするだけで全然良くならなかった。もう年だから…とあきらめていたんです。本当にうれしいです」と、とても喜んでくださいました。
まとめ
今回のように、「背中の痛み」でも、本当の原因は「肩の可動域の制限」だったというケースは少なくありません。
表面的な症状だけでなく、身体全体のつながりを見ていくことが、根本改善のカギになります。
そして何より、ご本人の真面目さと、奥さまの観察力があったからこそ、今回の結果につながったのだと思います。
10年来の症状なので、体調により症状の揺り戻しはありますが、その都度対処すれば、完治します。