芝居が終わったら、会場からは割れんばかりの拍手喝采です。凄かったです!
『盟三五大切』(かみかけてさいごたいせつ)とありますが何の事やら意味不明でした。
公式
感想
最初の演目は、舌出三番叟(しただしさんばそう)でおめでたい踊りだそうです。
三番叟: 「四代目中村鴈治郎」さん、千歳:「初代中村壱太郎」さんが踊ります。
『盟三五大切』が始まり、屋形船に乗って源五兵衛(げんごべえ): 「十五代目片岡仁左衛門」さんの登場で拍手です。
女性の観客からため息が出るほどの男前です。
仁左衛門さんこそ当代きっての名役者なんだと思います。芝居が進むにつれて、ドンドン引き込まれていきます。
【四谷鬼横町の場】で、小万の腕の彫り物が「三五大切」に変わったのを見て激高して、小万も小万の乳飲み子も殺します。
殺人なんですが歌舞伎の立ち回りが見事な流れで進んで行きます。立ち回りが綺麗です。大向こうも一杯掛かります。
小万の首を切って愛染院【愛染院門前の場】に向かいます。
その時に雨が降りしきる演出で音を上手に使っています。なんとも刹那な印象です。
その道行きの表情が哀愁というか、騙されても好きな人を殺してしまった無念と後悔、首を雨に濡れないように襟に包み込んで進みますが、首を気にかけて包み直す仕草が仁左衛門さんじゃないと出来ないんだろうと思う名演技です。
演技の間合いが絶妙なので名優と言われる所以でしょう。
笹野屋三五郎:「七代目市川染五郎」さんが最後に自分が悪かったと全ての罪を被って腹を切って締めくくり、善人に戻ります。来年襲名があるので染五郎さんの名前での出演ももう少しです。
若党六七八右衛門:「二代目尾上松也」さんが身代わりになり捕まり仁左衛門さんに縄をかけられる場面は見入ります。お互いに言葉は交わしませんが、あの世で再びと誓います。この花道のシーンも凄く良かったです。
芸者小万:「五代目中村時蔵」さんが演じる芸者は三五郎さん大切と一途であるが故に殺されますが、その立ち回りが拍子木のリズムに合わせて素晴らしいです。
最後に同じ長屋に居た塩谷浪士(赤穂浪士)が迎えに来ますが、めでたしめでたしとなる終わり方が殺人事件の毒気が抜けて良かったです。
ざっくりした粗筋
序幕
佃沖新地鼻の場
深川大和町の場
二幕目
二軒茶屋の場
五人切の場
大詰
四谷鬼横町の場
愛染院門前の場
かわいさ余って憎さ百倍と、お互い素性を明かさなかったので起きた悲劇です。
塩谷家浪人の薩摩源五兵衛さん。贔屓の芸者・小万に惚れてのぼせて上がって、叔父さんから都合を付けてもらった百両を身請けに使って、三五郎さんに騙し取られます。
仕返しで鬼となって犯人たちをたくさん殺してをします。しかし、三五郎さんと小万には逃げられます。
六七八右衛門がお化けが出ると言って出て行った長屋へ、三五郎さんと小万か引っ越してきます。そこの大家、くり廻しの弥助は源五兵衛さんの百両を盗んだ犯人の一味でした。
源五兵衛さんは、その居所を突き止め、贔屓の芸者も殺して、首を切って持ち帰ります。
源五兵衛さんは小万の首を台に置いてご飯を食べて、小万の口にご飯を持っていきますが、、、「本首(ほんくび)」の演出です。
これじゃ仇討ちには参加できないと切腹しようとしたら、実はみんな源五兵衛の縁のある者たちで、殺人の身代わりになってくれました。
近所の長屋に隠れていた塩谷浪士(赤穂浪士)達が迎えに来たので元の不破数右衛門として仇討ちに行く、という話です。
話が奇想天外ぶっ飛びすぎて面白いです。
盟三五大切とは
神に誓って三五郎さんが大切という意味です。
盟=かみかけて(当て字)
〖盟〗 メイ ちかう・ちかい
《名・造》神に告げて犠牲を殺し、その血をすすって仲間の約束をする。約束して仲間をくむ。ちかう。ちかい。
五大力信仰
「五大力(ごたいりき)」は、京都の上醍醐寺(かみだいごじ)で発行する泥棒よけの「護符(ごふ)」です。
大坂の南(みなみ)の繁華街・堀の内の遊女は、客に送る手紙の封じ目に「五大力」と書きました。
ふたりの秘密が他の人には知られないように、というおまじないでした。
狂言作者の並木五瓶(なみきごへい)は「五人切り」の物語に「五大力」の趣向を取り入れて、『五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)』(寛政6年[1794年])を書き下ろしました。
源五兵衛に秘密を打ち明けられた菊野(江戸では小万)は、芸者の命である三味線の胴に「五大力」を書いて誓いました。
南北は、それを芸者の腕に彫る「入れ黒子(ぼくろ)」という恋の誓いの「彫り物」にしました。
三五大切の彫り物や文字の意味
演目資料
盟三五大切 | 歌舞伎演目案内 – Kabuki Play Guide –
チラシ
ポスター
隠れ住む愛染院の庵室に帰る途中の演技が見事です