45年の臨床経験|観察から原因を見極め、治療設計で結果に導く

ニュージーランドからの患者さん—異文化の治療体験と、英語力への反省

60代後半の女性です。ニュージーランドからお越しになりました。付き添いの方と一緒に来院されました。

観光中に腰痛が出て、困り果てて観光案内所に駆け込まれたそうです。「鍼をしてくれるところはないか」と相談されたとのことで、当院をご紹介いただきました。

英会話の洗礼

これはチャンスだと思い喜んで引き受けました。英語を勉強して3年目です笑。実力はCEFR(セファール)A2(英検準2級~2級)くらいです。只今B1の勉強中です。

英語のCEFRとは – Google 検索

習っている米原幸大先生に連絡したら「異文化交流を楽しんで下さい」と言われました。

ジョーデンメソッド | ジョーデン・メソッド援用推進協会

先生に師事してから、2年を経てようやく上達への道筋が見え、英語商材に散財することは無くなりました。speakingが基本で、繰り返しが語学習得の極意だそうです。

しかし結果はグダグダでした。教科書上の会話と実際の英会話は、まったく別物です。スマホのGoogle翻訳を駆使しましたが、医療の細かいニュアンスは機械では拾えません。クソー!

CEFR(セファール)B2くらいの英語力(英検準1級~1級)が必要です。道のりは遠いです。

以前、海外演者の講演を拝聴したとき、通訳を通すと時間が倍かかると実感しました。今回も同じでした。治療は1時間を予定していましたが、翻訳機を通すたびにやり取りが止まります。結果として2時間かかりました。

自分の英語力を高めるしかないと、あらためて実感しました。

問診の苦労

問診票は厚労省のものをダウンロードして用意しました。しかし当院のスタイルに合わず聞きたい項目が無く、使いものになりませんでした。準備不足でした。

外国人向け多言語説明資料 一覧|厚生労働省

現在の服薬についてはメモに書いていただき、その場で検索して確認しました。骨格矯正も行いますから骨そしょう症の有無、ペースメーカーの装着なども確認しました。

2年前に心筋梗塞でカテーテルアブレーション(心臓の治療)をされたとのことです。お薬は以下の3種類でした。

  • RIVAROXABAN=リバーロキサバン(イグザレルト):抗凝固薬⇒血液をサラサラにするお薬
  • LOSARTAN=ロサルタン(ニューロタン):ARB薬⇒血圧を下げるお薬
  • MYLOC CR=マイロック錠(セロケン):β遮断剤⇒心臓の負担を減らすお薬

日本人と同じなんだなと感心しました!

患者さんが「お薬を飲むのが嫌なんです」と言われていました。だから鍼に来られたんですね。

抗凝固薬を服用中です。鍼を打てば皮下出血のリスクがあります。患者さんにはそのことを伝えて同意してもらいました。

その点に十分注意しながら施術を行いました。

初検時の症状と治療

海外の人たちは、東洋医学、特に鍼を怖がるのが普通です。未知の分からない物に対しては強い拒否感を示されます。

皮膚に刺す鍼は大丈夫ですか?と聞けば、本国でも鍼治療を受けたことがあると言われたので安心しました。

上向きで診察すると、膝にがっしりしたサポーターを巻かれていました。あれー?問診票に書いてないよー。「膝も痛いの?」と聞けば、「そうです」と言われました。

聞くと関節炎(arthritis アースライティス)とのことです。腰だけでなく膝も一緒に治療することにしました。

膝には水は溜まっていなく少しの腫れで、足背の腫れは静脈瘤も関係していますよと解説しました。

結局、この膝をかばって観光をしたために悪化した坐骨神経痛だったのが後で分かったのです。

治療の内容は以下のとおりです。

  • 右膝関節炎への鍼治療
  • 腰部への鍼治療(左右の側臥位)
  • 仙腸関節の矯正(骨盤の動きの調整)
  • 腰椎、胸椎、頸椎、後頭骨の矯正

付き添いの方も膝が痛いと言われました。こちらはソマニクス®(微小皮膚刺激デバイス)を貼付しました。その人が「O脚の診断を受けていると」言われたので、「手術の予定はありますか?」と聞けば、「その予定は無い」とのことです。膝関節内側裂隙に痛みがありました。

問診の意思疎通、その難しさ

治療後の徒手検査も終わり、「The treatment is finished.(治療は終わりました)」と、にこやかに言ったら、「実はお尻も痛いの(膝の反対側)」と切実に言われます!?

おいおい!あれれー?問診票には書かてないよー。

遠い異国の地で痛みを抱えて困っておられると思い、「この後の観光の予定は入っていないの?」と聞けば、「ホテルに帰るだけだ」と言われたので、追加で治療することにしました。

診たら坐骨神経痛でした。最初に言ってよー!

問診の際にしびれはないかと何度か確認しました。そのたびに「ノー」とおっしゃっていました。しかし意思の疎通が十分できていなかったようです。これは反省です。

しびれは「Numbness(ナムネス)」というのですが、坐骨神経痛の「Sciatica(サイアティカ)」と聞けば良かったのですが、そもそも患者さんがその診断を受けていなかったのではと思います。スネの痛みは腰からですよとは説明したら納得されました。

また、「肩こりはないですか」と聞くと「無い」と言われましたが、「首は痛い」と言われ一緒に治療しました。アジア人とは骨格が違います。症状の出方も異なるのかもしれません。勉強になりました。

以前、米国の人も首は痛いけど肩こりは無いと言ってました。欧米人は東アジアの日本人と違い筋肉が凄く柔らかいのです!

ソマニクス®と、欧米のセルフケア意識

残り4日間、東京観光を含めてまだ旅が続く予定だそうです。痛みのコントロールのため、患者さんの患部にもソマニクス®を貼付しました。意外やこれが大好評でした。

SOMANIKS | 皮膚刺激で痛みを緩和するメディカルパッチ SOMANIKS

英語のパンフレットを渡して使い方を説明したところ、「2箱欲しい」と言われました。驚きました。諸外国ではセルフケアへの意識が高いとは聞いていましたが、本当でした。

強い痛み用のミオ、予防的や筋肉の張りに使うヘムを購入して頂きました。

この体験から

「日本の皆さんは親切で優しい」と言っていただきました。白川郷も金沢も気に入ってくださったようです。最後は治療を感謝されて終わりました。

白川郷の発音も、Shi-ra-ka-WA-go(し・ら・か・・ご)とと 「WA」 を一番強く発音しないと外国人には分からないです。山本もヤマロになります。

今回の体験を受けて、英語圏の患者さん向けの問診票を新たに作成しました。次に備えます。同意も含めると6ページになりました。

それ以上に痛感したのは、やはり英語力の問題です。翻訳機には限界があります。医療の現場では、自分の言葉で伝えるしかありません。勉強を続けます。

外国人の治療の間は付ききっりになるので、問題は他の患者さんの治療ができないことです。これも英語が上達すれば解決しますから、ますます精進したいと思います!

英語の先生は、「年齢的に発音はネイティブにはなりませんが通じる英語を目指して下さい!」とご託宣をいただき、俄然ヤル気が出てきました。

異文化の治療体験は、なかなか楽しいものでした。また来院されることがあれば、今度はもう少しまともな英会話でお迎えしたいと思います。

その日の夜は、疲れ果てて電池が切れたように寝てしまいました(^_^)

ニュージーランドの風景

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村坂 克之

小又接骨院・鍼灸院の院長です。鍼師、灸師、柔道整復師の国家資格にて治療を行っています。屋号の小又(こまた)は、先祖の小谷屋亦治郎(亦=又)に由来します。PC文字入力は親指シフト(orz配列)ユーザー。
詳しくは院長略歴をご覧下さい。