私が加圧トレーニング®の資格を取得したのは2002年(平成14年)のことです。
発明者の佐藤義昭医学博士より直接指導を受けました。以来20年以上、臨床でこの療法を使い続けています。
なぜ加圧トレーニング®がこれほど効くのか。長い間、経験として知っていました。しかしそのメカニズムを、改めて整理する機会がありましたので、ここに書きます。
血管は細胞まで届いていない
私たちの体には、全長10万kmにも及ぶ血管が張り巡らされています。地球を2周半する長さです。
心臓がポンプとなり、酸素と栄養を全身へ届けるこのシステムは、一見すると完璧です。
しかし、落とし穴があります。
血管は、37兆個ある細胞の「玄関先」まで直接届いていないのです。
毛細血管の末端と、個々の細胞との間には、わずかなすき間があります。このすき間が、いわば「ラストワンマイル」です。
ここで物流が止まると、細胞は酸素不足・栄養不足に陥ります。筋肉は動かず、回復も遅れます。
組織液(間質液)という「名もなき配達員」
このラストワンマイルを担っているのが、組織液(間質液)です。
細胞の周囲を満たしている、透明な液体です。
血管から染み出した水分・酸素・栄養を細胞へ届け、細胞から出た老廃物を回収して静脈やリンパ管へ戻す。この循環を黙々と行っています。
組織液が「清流」か「淀んだ泥沼」か。この差が、身体の状態を決定すると思います。
疲れが抜けない、回復が遅い、慢性的な炎症が取れない——こうした患者さんの多くで、この「泥沼化」が起きていると考えています。
KAATSU®サイクルが行うこと
KAATSU®(加圧トレーニング)の本質は、筋肉を鍛えることだけではありません。
組織液を入れ替え、細胞の周囲環境をリセットする。これが核心だと思います。
専用ベルトで四肢の付け根に適切な圧力をかけ、それを繰り返し解放する「KAATSUサイクル」により、3段階の変化が起きます。
KAATSU®サイクルは、KAATSU®トレーニング専用デバイスでのみ実現できる方法です。
①加圧(血流制限)——強制デリバリー
圧力をかけると、血管内の圧力が高まります。
すると血液中の水分・酸素・栄養素が毛細血管の壁から染み出し、ラストワンマイルへと強制的に押し込まれます。
普段は届きにくい細胞の隅々まで、栄養が浸透します。
②パンプアップ——老廃物の押し出し
新しい水分が流れ込むことで、細胞の周囲に滞留していた古い水分が押し出されます。
老廃物・疲労物質・炎症物質を含んだ「泥水」が、新鮮な水に置き換えられていく瞬間です。
③除圧——大掃除の完了
ベルトを外すと、入れ替わった組織液が静脈やリンパ管へ一気に回収されます。
細胞環境が完全にリセットされ、「清流」が戻ります。
組織液が清流になると何が変わるか
臨床で実感していることを、3点に整理します。
エネルギーが出やすくなる。
栄養の浸透がスムーズになり、細胞が本来の力を発揮できるようになります。
「体が軽くなった」と言われる患者さんが多いです。
回復が速くなる。
疲労物質・炎症物質が素早く運び去られます。
整形外科的な痛みの慢性化には、この「老廃物の滞留」が関与していることが多いと思います。
神経の反応が鋭くなる。
組織液が淀んでいると、神経の信号伝達も鈍くなります。
清流に戻ることで、動きの切れや感覚の改善が起きます。高齢の患者さんでも、バランスや歩行の改善を実感される方が多いです。
治療への応用
当院では、加圧リハビリを術後・骨折後・廃用性筋萎縮のリハビリに取り入れています。
通常のリハビリでは関節に大きな負荷をかけることが難しい患者さん——骨粗しょう症の方や術後早期の方——でも、低負荷で組織液の循環を促すことができます。
「筋肉をつけるためのトレーニング」という認識だけでは、この療法の半分しか使えないと思っています。
細胞環境を整える手段として。慢性的な炎症を抱えた患者さんへのアプローチとして。KAATSU®の可能性はまだ広いと考えています。
あきらめている方へ
「年だから回復しない」「慢性だから仕方ない」と言われた方がいます。
しかし、細胞レベルの環境を整えることで、変化が出ることがあります。
45年の臨床経験から、そう思います。
一度ご相談ください。

