44年の臨床実績 結果を出す手技治療

たった1〜2杯でも?少量飲酒をやめると血圧が下がるという最新研究

「お酒は適量なら健康に良い」と言われることもありますが、実はごく少量の飲酒でも、やめることで血圧が下がる可能性があるという研究結果が出ています。

今回は、東京科学大学と聖路加国際病院の研究チームが、約5万9千人の健診データを使って明らかにした“少量飲酒をやめることでの血圧低下”について、分かりやすく解説します。

少量の飲酒でも禁酒で血圧が低下することを実証 | Science Tokyo – 東京科学大学

Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Checkup Analysis | JACC

原稿公開日(Original Research)」 2025年10月22日です。

本文

研究の背景

高血圧は、心筋梗塞や脳卒中など、重大な心血管疾患の大きなリスク要因です。飲酒(アルコール摂取)は、血圧を上げる原因のひとつとして以前から知られています。


ところが、「ごく少量(1日1〜2杯程度)の飲酒」をやめたり減らしたりしたとき、血圧がどう変わるか、特に女性でのデータが十分でないという課題がありました。

研究の中身

研究チームは、2012年10月〜2024年3月に実施された、約58,943人の参加者・359,717回の健診データを用いて縦断解析(同じ人を長期に追って飲酒量の変化と血圧の変化を観察)を行いました。


ポイントは次の通りです:

  • 飲酒習慣があった人が「飲酒をやめる・減らす」変化をした場合、血圧が「飲酒量の減少に応じて(用量依存的に)」低下しました。
  • 飲酒をしていなかった人が「飲酒を始める」変化をした場合、血圧が上昇する傾向が見られました。
  • アルコールの種類(ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキーなど)による差はほとんどなく、純粋に“エタノール量”が関係していると示唆されました。

主な結果

わかりやすく数値を見てみましょう。

  • 女性:1日あたり1.0〜2.0杯飲んでいた人が禁酒した場合、収縮期血圧(上の血圧)が 0.78 mmHg 低下、拡張期血圧(下の血圧)が 1.14 mmHg 低下。
  • 男性:1日あたり1.0〜2.0杯飲んでいた人が禁酒した場合、収縮期血圧が 1.03 mmHg 低下、拡張期血圧が 1.62 mmHg 低下。

数値としては大きく見えないかもしれませんが、対象者が多く、少量飲酒からの変化でも「統計的に有意な(偶然ではない)低下」が確認された点が重要です。

なぜこの結果が意味あるのか?

  • 従来、飲酒量が多い人(いわゆる“多飲”)を対象に「飲酒を減らす/やめる=血圧が下がる」という研究はありましたが、少量飲酒者(1日1〜2杯程度)の飲酒をやめる/減らす影響は十分に検証されていませんでした。今回、そのギャップを埋めるデータと言えます。
  • 性別差、飲酒種類(酒類)差がなかったという点も注目で、女性の少量飲酒に対しても同じような効果が得られたことは臨床的にも意義があります。
  • 臨床現場・健康指導として、少量だから大丈夫、という安心が必ずしも血圧への影響なしを保証するわけではないというメッセージを与えています。

臨床・健康指導の観点からのポイント

  • 「毎日1〜2杯だけ」でも飲酒がある場合、少し控える、あるいは一時的にやめてみることで血圧にわずかでもプラスの影響が出る可能性があります。
  • 酒の種類を変えたり“これなら大丈夫”という選択をしても、純粋に“アルコール量”がカギなので、種類では安心できない、という情報を共有できます。
  • 飲酒習慣だけでなく、血圧を含む生活習慣(食事、運動、睡眠、ストレスへの対応)を総合的にみることが重要です。
  • 患者さんが「少量ならいいだろう」と感じていたケースでも、血圧が下がらない/むしろ上がる可能性があるという話をするきっかけになります。
  • 生活において、「飲酒量・頻度」を具体的に考える価値があります。

注意点・限界

  • この研究は“観察研究”です。つまり、飲酒をやめた/始めた人をただ追跡して血圧変化をみたもので、必ずしも「断酒が直接的に血圧を下げた」と因果関係まで証明されたわけではありません。
  • 血圧低下の数値自体は「0.4〜1.6 mmHg」程度と小さめです。あくまで群統計で有意だったという結果なので、個人が劇的に血圧が下がるとは限りません。
  • 研究対象は日本人の健康診断データです。背景(遺伝、飲酒習慣、食文化など)が異なる他国・地域への直接的な適用には慎重さが必要です。
  • 長期的な心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中など)リスク低下にどれだけ寄与するかは、今後の研究課題です。

まとめ

今回の研究から言えることは、

「たとえ毎日1〜2杯程度の“少量飲酒”でも、やめたり減らしたりすることで血圧がわずかに下がる可能性がある」ということです。

「飲酒習慣を少し見直す」という方向性が、非薬物的に血圧管理を後押しする一手になり得ます。

もちろん、飲酒を完全に否定するわけではなく、飲み方・頻度・休肝日・他の生活習慣とのバランスを考えることが大切です。

患者さんへ

  • 「1日1杯」と思っていても、それが毎日続けば“少量飲酒”に該当します。
  • 休肝日を設ける・飲酒日数を減らす・1回あたりの量を控えるなど、段階的な見直しが可能です。
  • 飲酒以外にも、塩分・カリウム・体重・運動・睡眠・ストレス対策も血圧に関係します。
  • 血圧が高めの方、既に降圧薬を使っている方、心血管疾患のリスクがある方は、飲酒習慣とともに医師・専門家と相談しながら調整しましょう。
  • 治療で体のバランスを整えつつ、生活習慣(飲酒・食事・寝方・運動)も少しずつ整えていくことで、より良い効果が期待できます。

脂肪肝も含めて肝機能が悪いですねと指摘されたら断酒しか道はありません。 もし改善しても少しだけ飲んでも良いだろうは無いのです。

よく、お酒を止めたら楽しみが無くなると言われますが、他の楽しみを見つけなさいとの示唆かもしれません。禁煙と一緒です。徒や疎かにできません。

健康で長生きをしましょう!

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この記事を書いた人

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村坂 克之

小又接骨院・鍼灸院の院長です。鍼師、灸師、柔道整復師の国家資格にて治療を行っています。屋号の小又(こまた)は、先祖の小谷屋亦治郎(亦=又)に由来します。文字入力は親指シフト(orz配列)ユーザー。
詳しくは院長略歴をご覧下さい。