結果を出す手技療法

過敏性腸症候群(IBS)の60代女性 1年間続けた鍼治療で体調が回復しました

ある女性の患者さんが、1年ほど前から週1回の鍼治療を受けておられます。

IBSが鍼で直ぐ回復したという報告がありますが、本来のつらい下痢タイプの過敏性腸症候群(IBS)では無いと思います。

体質を変えるのはなかなかの難事業です。1年(四季)は必要ではないでしょうか。

【患者さんの声】1年後、「体が丈夫になった」と感じるように

来院のきっかけは「関節の痛み」でした。お母さまが慢性関節リウマチを患っていたこともあり、「自分も同じ病気かもしれない」と不安に思われていたのです。

クリニックで詳しい検査を行った結果、リウマチではないことが分かり、まずは一安心。とはいえ、全身の関節が痛く、体調を崩しやすかったりという不調は続いていました。

そうした体調の波には、「体質」が関係していることもあります。患者さんの場合、お腹(腸)の調子も崩しやすく、体の中心である消化器の不調が全身に影響しているようでした。

漢方的には胃は第一発電所と考え、ここが調子悪いと体の全てが上手くいかず、治ってきません。

鍼治療を続ける中で、まず変化が出てきたのは肩こりでした。若いころからずっと悩んでいたそうですが、治療を続けるにつれ、少しずつ軽くなり、半年ほどでほとんど気にならなくなりました。

すると不思議なことに、腸の不調も自然と改善していったのです。お腹の張りや便通の不安定さも整ってきて、体全体が軽く感じられるようになったとのこと。

1年が経った今では、ストレスがあっても体調を崩しにくくなったと喜ばれています。「前よりも体が丈夫になった気がします」というお言葉に、私たちも嬉しくなりました。

当院では、ただその場の症状だけを見るのではなく、体全体のバランスを整えることを大切にしています。体の声に耳を傾ける治療を、これからも一人ひとりに合わせて行っていきます。

解説

過敏性腸症候群(IBS) – 03. 消化器系の病気 – MSDマニュアル家庭版

過敏性腸症候群(IBS)とは、消化器の異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常(下痢、便秘など)が慢性的に繰り返される病気です。主な原因は、ストレス、不安、抑うつなどの心理的要因や自律神経の乱れと考えられています。

タイプ主な症状排便後の改善よくある便性
下痢型突然の腹痛と下痢ありゆるい or 水様便
便秘型腹部膨満・硬便ありコロコロした硬い便
混合型便秘と下痢が交互あり日によって変化
分類不能型特徴が不明確あり明確なパターンなし

詳しくは専門医を受診してください。

変化を感じられないようなら、当院のアプローチも合わせると良いでしょう。

鍼がIBSに有効であると報告した論文

以下は、鍼治療が過敏性腸症候群(IBS)に効果があると報告された主な研究論文です。

鍼治療の有効性を示す主な研究

  1. ACTION試験(2025年)
  • 中国の6病院で実施された多施設ランダム化比較試験。
  • 下痢型IBS(IBS-D)の患者280名を対象に、6週間で15回の鍼治療または偽鍼治療を実施。
  • 6週目の時点で、鍼治療群の57.9%が主要評価項目(腹痛の30%以上の改善および下痢日数の50%以上の減少)を達成し、偽鍼群の41.4%と比較して有意な改善が見られた(p=0.008)。
  • 効果は18週間持続し、副作用は報告されなかった。 (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  1. Frontiers of Medicine(2024年)
  • 難治性IBS患者170名を対象に、真の鍼治療と偽鍼治療を比較。
  • 鍼治療群はIBS症状重症度スコア(IBS-SSS)の有意な改善を示し、生活の質(QOL)や不安症状の改善も報告された。
  • 副作用は軽度で一過性のものであり、安全性が確認された。 (news-medical.net)
  1. LWW誌(2022年)
  • 複数のランダム化比較試験(RCT)およびメタアナリシスを通じて、鍼治療がIBSの症状緩和に有効であることが示された。
  • 鍼治療は胃腸運動の調整、内臓過敏性の抑制、脳腸相関の改善、免疫および腸内フローラの調整など、複数のメカニズムを通じて効果を発揮する可能性がある。 (jsge.or.jp, journals.lww.com)
  1. BMJ Open(2021年)
  • 難治性IBS患者を対象に、鍼治療の有効性と安全性を評価するランダム化比較試験を実施。
  • 鍼治療群は症状の有意な改善を示し、副作用も軽微であった。 (jstage.jst.go.jp)

これらの研究は、特に下痢型や難治性のIBS患者において、鍼治療が症状の改善に有効である可能性を示しています。ただし、研究デザインや対象集団、評価指標が異なるため、今後さらなる大規模で質の高い研究が求められます。

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村坂 克之

小又接骨院・鍼灸院の院長です。鍼師、灸師、柔道整復師の国家資格にて治療を行っています。屋号の小又(こまた)は、先祖の小谷屋亦治郎(亦=又)に由来します。親指シフトユーザー。
詳しくは院長略歴をご覧下さい。