「最後まで治さないとダメですか?」という質問に思うこと

「治すと患者さんが来なくなるから、治さないようにしている」。そう考える治療家に、私は会ったことがあります。

治れば、その患者さんは来なくなります。それは施術の成功です。

また、目的を決めずに「悪くならないように」と通わせ続ける考え方にも、違和感があります。

治すことを目指す。それが私たちの仕事ではないでしょうか。

先日、私が講師を務めた講習会で、受講者から質問がありました。

「最後まで治さないとダメですか?」

私はこう答えました。

「治すのが私たちの仕事ですよ!」

少し厳しい言い方だったかもしれません。しかし、長年臨床に携わってきた私にとって、これは譲れない考え方です。

痛みが軽くなれば、それでよいのか

施術によって痛みが半分になった。関節の動きが改善した。患者さんが楽になった。それは確かに治療の成果です。

しかし、そこで施術者が満足してよいのでしょうか。

患者さんが求めているのは、一時的に楽になることだけではありません。痛みを気にせず歩きたい。仕事に復帰したい。趣味を楽しみたい。以前の生活を取り戻したい。

その願いに、私たちはどこまで応えられるのか。私は常に考えています。

治せないことと、治そうとしないことは違う

もちろん、すべての疾患や症状を完全に治せるわけではありません。加齢による変性、不可逆的な組織損傷、進行性疾患など、医学的に回復が難しい病態もあります。

しかし、「治せないこと」と「治そうとしないこと」は、まったく違います。

  • 改善が不十分なら、なぜ改善しないのかを考える。
  • 評価を見直し、治療方法を再検討する。
  • 必要なら医療機関での精査を勧め、他の専門家につなぐ。
  • 完全な回復が難しい場合でも、痛みの軽減、機能の維持、生活の質の向上を目指す。

それも施術者の大切な仕事です。

治療を続けることが目的ではない

誤解してほしくないのは、「最後まで治す」ことが、いつまでも通院させることではないという点です。

改善が得られない治療を漫然と続けても、患者さんの利益になりません。

治療の目標を明確にし、経過を評価し、必要なら方針を変更する。

患者さん自身が納得できるところまで回復し、治療から卒業できることも、大きな成果です。

臨床家としての責任

私は鍼灸、柔道整復、カイロプラクティック、オステオパシーなど、さまざまな治療技術を学び、臨床に取り入れてきました。

それは、技術を増やすこと自体が目的ではありません。目の前の患者さんを、少しでも良くしたいからです。

治療技術は手段であって、目的ではありません。患者さんを良くするために技術があるのであって、技術を使うために患者さんがいるのではありません。

講習会でのあの質問は、私自身にとっても、臨床家としての原点を再確認する機会になりました。

治せるものは、最後まで治す努力をする。治せないものは、その限界を見極め、患者さんにとって最善の道を探す。

それが、私の考える治療家の責任です。